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ヨシュアの『夢』について考えたこと

KH3Dリク編でヨシュアが言ってた
「ドリームイーターは夢を持たない者を襲わない」
「おかしいよね、僕にも夢があるはずなんだけど」
について考えたこと

※考察でも何でもありません。あくまで私が勝手にそう思ってるだけの解釈の話です。
KH3Dすばらしきこのせかい、新すばらしきこのせかいのネタバレがあります。
 
最初このシーンを見たとき、KH3Dのトラヴァースタウンはヨシュアの『夢』からできているのでヨシュアが夢を持っているか否かに拘わらず、単に「ヨシュアが今回のトラヴァースタウンの創造主だからナイトメアに襲われない」んだと思ってた。
 
単純にこっちが正解かもしれないけど、でももしかしたらこういう考え方もあるかもしれないっていう話。

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この時の口ぶりと表情を見るに、ヨシュアには「これが僕の夢だ」と明確に自分で認識している「夢」があるんだと思う。だからなぜ自分がドリームイーターに襲われないのか本気で疑問に思っているような口調だった。
 
あと、これはドドデ小説版(Side Riku)に本当にある記述なんですけど 「おかしいよね、僕にも夢があるはずなんだけど」  のヨシュアを見たリクの反応が「ほほえみながら言っているのに、さびしそうに見えたのは気のせいだろうか」って書かれてるので本当に無理。気のせいじゃないので。
 
確かにそれはあのシーンのムービーと声色を聴けばわかることではあるけど、文字ではっきり「さびしそう」って書かれると破壊力がすごい。
(このシーンに限らず、小説版はゲームよりもシーンも会話も増えているのでオススメ。再訪時、シキがソラに「ネクとリクって似てるよね」って話しかける会話とかある)
 
ここで言う「夢」とは、すばせか本編でのライムのエントリー料のことを踏まえると「眠っている時に見る夢」ではなく「将来の夢」といったような文脈で使われる「夢」。
 
つまり、「夢」=その人の望み、願い。
 
「おかしいよね、僕にも夢があるはずなんだけど」=ヨシュアには叶えたい望みがある。
 
それなのにナイトメアに襲われないってことは、ヨシュアの「夢」はナイトメア(あるいは「眠りにとざされた世界」そのもの)に「夢」と認識されていないのでは?
 
そうだとしたら、どうして「夢」として認識されていないんだろうって考えて、もしかしたらヨシュアが自分の夢だと思っている望みは、既に叶っているからなんじゃないかと思った。
 
じゃあそのヨシュアの「夢」って何?って話なんだけど、これはすばせか本編の真エンディングとKH3Dでソラとリクに見せた表情、そしてネクたちへの言動を見ていると何となく察しがつく。
 
ヨシュアの「夢」は多分、「他者との繋がり」。
もっと具体的に言うなら「ネクたちと友達になること」。
 
特にKH3Dは歴代のKHシリーズの中でも一際ソラとリクの「お互いを信じる心の繋がりの強さ」がメインに描かれている作品、且つ、当のヨシュア本人がそれを「うらやましい」と言っているのでこれでほぼ間違いないような気がする。

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とかなんとか言ってるうちに買い直した小説版読み返したら、ソラ編再訪時の「君たちがうらやましいな」のシーン、この言葉を受けたソラの独白があってそれが「ヨシュアは誰かと繋がりたいのに、繋がれていないという事だろうか」だったので泣いた。やっぱそうなんじゃないか。
 
KH3Dにおけるヨシュアは、ずっとネクたちの為に行動してる。
 
・ネクたちの存在を消すまいと、かろうじて残った夢の欠片をかき集めて退避させる場所を探す
→眠りにとざされた世界に自分の「夢」を使ってトラヴァースタウンをつくる
 
・元居た世界(UG)のルールに則り、死神ゲームと同じ状況で戦うネクたちをサポート
→ソラとリクがトラヴァースタウンに再訪することになったのは、ネクたちのミッションを手助けしてもらうためにヨシュアが二人を呼んだから
 

この……本編では考えられない献身っぷりというかなんというか……人(ではないけど)って変わるもんだね……。
 
個人的には新すばせかのヨシュアKH3Dのこのヨシュアのスタンスに近い気がする。「人間に肩入れしている神様」っていう点で。
(ヨシュアが人間に肩入れしている神様だっていう話は、新すばせか真エンディングでの追加シーンの英語版ヨシュアのセリフがやばいっていう記事の方でガッツリしてます)
 
そして、ネクもネクではっきりヨシュアの前でヨシュアのことを「友達」って呼んでるんですよね。ソラに友達だって紹介するし(ちょっと間はあったけど)、特に再訪時のこのやり取り。

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私、「友達だろ」って言った後に一瞬ネクが見せる、口角を上げて目をほんのわずかに細めるあの表情がめちゃくちゃ好きなんですよね。
 

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これ。この顔。本っ当に最高の表情だと思うんですよこれ。
心から相手の事を友達だと思ってなきゃ絶対こんな顔出来ないから
 
ただ、肝心のヨシュアの方がそれを受け入れてないように見える。
ネクの「友達だろ」に「ありがとう」って返しはするけど、結局最後までネクの顔を見ようとしてない。なんか「自分は彼らの友達にふさわしくない」って考えてるような……。
 
すばせか本編、もしくはアニメを見た方ならわかる通り、ヨシュアがすばせか本編でネクたちにやったことは酷い。というか、ヨシュアが「すばらしきこのせかい」の起承転結の「起」そのもの。
 

 
これはアニメ最終話のときのツイートなんですけど、ほんとこれなんですよ。
自分を殺して騙して裏切って利用してた相手の事、「友達」なんて思えます?普通は無理。
 
でも、ネクはハネコマさんの「パートナーを信頼しろ!」という言葉に背中を押されて自ら銃を放棄した(アニメ版)。ヨシュアを信じる事を選んだ。
 
「俺はお前を許さないけど、俺はお前を信じる」っていう、アニメではカットされたすばせか本編エンディングでのネクの独白セリフがあるんですけど、個人的にはネクのヨシュアに対する感情はこれが全てだと思ってる。
 
相手を許さないことと、友達ではない、はイコールではないんですよね。ネクの中で。
 
で、作中でヨシュアが受けた報い(っていう言い方はちょっと大げさだけど)が、真エンディングでのハネコマさんの「なんだか寂しそうじゃないですか?」だと思ってる。

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エンディング、RGに生き返って友達として再会するネク達の輪の中にヨシュア入れなかった。そのことに対する「なんだか寂しそうじゃないですか?」なんだよね。

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(余談だけど、新すばせかでヨシュアが出てきた時の「同窓会が楽しそうだったから顔を出そうかと思ってね」っていうの、多分これを踏まえての発言だったんじゃないかと思う。すばせかでは生き返って再会したときヨシュアだけいなくて5人揃わなかったから……)
 
KH3Dヨシュアは、ネクたちがいないところで彼らを「友達」、「親友」と呼ぶ。
「友達」まではまあわかるとして、「親友」はちょっとびっくりした。えっそこまで?ってなった。

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個人的にKHシリーズにおいて「親友」って結構特別というか重い意味を持っている単語の一つだと思ってるんですけど(だいたいDaysとBbSのせい)、それを、それを!!よりにもよって!!ヨシュアの口から言わせるのなんか……なんかさあ!!意味深じゃん……
 

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ソラとリクに声を揃えて「ヨシュア 君は何者なんだ?」って尋ねられた後のこのいたずらっ子みたいな笑い方ほんとすき
 
 
ソラ編再訪ラスト、ソラは「シブヤでまた会おう」とネクたちと約束をする。
(リク編でもビイトが「またみんなで会おうぜ」とリクと再会の約束をしている)
ソラが手を差し出して、ネク、シキがそれに自分の手を重ねる。

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……んだけど、ヨシュアは手を出さない。ソラがヨシュアの方を見て、目線で促してようやく手を重ねる。しかも、手を出す前に一瞬なんか悲しそうな顔する。

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これ……この顔……ほんとなんなの……なにその顔。どうして一瞬悲しそうな顔したの?わざわざこんな顔させるってことは、どう考えても開発側に絶対意図があるじゃん。

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そしてここ。ご丁寧にヨシュアが小さく息を吐く音が聞こえる。良平さん?????
台本のト書きになんて書いてあったのか教えて

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ここでようやく手を重ねる。ようやく。ようやく!!手を!!
 
手を重ねる前の会話に、ネクの「ソラの言うとおり 難しいことじゃなかった」っていうセリフがあって、

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これはソラとネクの初対面の時の「友達なんてそんな簡単にできるもんじゃない」「そうかもしれないけど難しいことじゃない」っていうやりとりに対するネクの答え。

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この、ソラに影響されてネクが出した「友達を作ることは難しいことじゃない」っていう答えが、ヨシュアにとってはすごく難しいことだからこんな顔したのかな……。
 
 

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私このセリフすごく好きなんだけど、「人は独りぼっちじゃ存在できない」なら、神様は独りぼっちでも平気なんですか?
 
「ひとり」がひらがなでもなく「一人」でもなく「孤独」の「独り」なあたり、なおさら考えてしまう。
 
すばらしきこのせかいにおいて、ハヅキという「ヨシュアの後輩」かつ「新宿コンポーザー」っていう立ち位置の存在がいて、ヨシュアが完全に独りなわけではないっていうことは分かった。でも、彼はあくまで「役職が同じ」な「後輩」であって、「友達」ではない。
 
ヨシュアが欲しいのは恐らく「対等な友達」だから、ハヅキではヨシュアの夢は叶えられない……。
 
それともう一つしんどかったのがすばせかアニメの円盤下巻のパケ絵。これ、明らかにヨシュアだけがシキのスマホカメラの画角に入ってない……
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これが公開されたとき、14年越しにネクがヘッドフォンを外した姿が正面から描かれたという事実よりも先にどう見ても4人には認識されていない(見えてない)ヨシュアに目が行ってしまって、一瞬でKH3Dでのヨシュアを思い出して「うわあ……エッグいことする~……」って思った。
 
 
まとめると、
 
ヨシュアはネクたちと繋がりたいと思っているしその気持ちを自覚もしている(自身の「夢」として認識している)上に、ネクたちからもきちんと同じ気持ちが返ってきているからヨシュアの「夢」はすでに成就している。
でもそれを当のヨシュア本人が認めていないから、次の新しい「夢」を持っていない状態=「夢を持たない者」と眠りにとざされた世界に認識されている。だからナイトメアにも襲われない
 
って感じ。
 
「神様は人間とは友達にはなれない」っていう結論に着地してしまっているんだろうな、ヨシュアの中で。
 
手を重ねる直前のあの悲しそうな顔、ネクがはっきりとヨシュアを「友達だろ」と口にしていて、ソラも「ヨシュアの気持ちだって伝わってるさ」と言った会話があった後に出てくる顔なのがなおさらしんどい。
 
ネクの言葉でもソラの言葉でもヨシュアの認識が変えられないのなら、やっぱりヨシュアが自力で彼らとの間に引いた一線を越えない限り、ネクたちと、そしてソラたちとも本当の意味での友達にはなれないよなあ……。
 
 死神ゲームを経てそれぞれが自分の世界を広げて成長した中で、唯一境界を越えられていないヨシュア……切ない。